この世は鏡合わせ________なんてことを誰かが言った
とある昼下りのこと、ある魔女が箒に乗りながら散歩していたのだ、これを散歩と呼べるのかどうかは分からないが散歩である。
「ん・・・?」
偶然見つけた骨董品屋を興味本位で覗くも中が暗すぎて良く分かんなかったがなんとなく覗いていた宝石の魔女 エリミア・ジュエリーは目を一瞬疑った
「まさかぁ…でももう一度だけ・・・」
改めて見てみる彼女の目に狂いは無い…
「やっぱりね…!」
昔、魔女かつ同業者である者から聞いた話を思い出す・・・
「ねぇ、知ってるかい?」
「なにを?」
「この世界は鏡合わせなんだって」
「鏡合わせ…?」
「そう!鏡合わせ!」
「その鏡の名前とかあるの?」
「"黄金の鏡"と言う魔法導具があるんだとか」
「不思議な名前…だけど面白そうね」
「んで、その魔法導具はもう一つの世界を映し出すと言われてるらしいよ」
「へぇ・・・」
なんてことを彼女から聞いたあの"魔法導具"があるのだ。
これはなんとかして回収したい!何故なら、興味本位の品物の一つなのだから!
これは虚ろながらもの脆く 危うい世界の話
エミリア「まさかこんなところに魔法導具があるなんてさ…」
この世には"魔法導具"と呼ばれるものがある
問題な品もあれば 便利な品もあるし 意味不明なものもあるという変な導具である。その一つが存在したのだ、しかもなんの変哲もない普通そうな骨董品屋に・・・
エミリア「あっはは〜偶然あるものなんだね」
骨董品屋に恐る恐ると入り鏡を持ちあげる。
エミリア「(うわっ、意外と重い)」
ずっしりかつ重い・・・こうして近くで見ると金色のフォトフレームが見たことのない技術によって造られており、表面の鏡は邪悪な真実なものまでしっかり移してくれそうなほど美しい輝きをしているのだ。これはまるで職人技…いや、長年の匠が丹精込めて造ったと思わせるほどなんとも言えない不思議な魅力を持つ鏡だったのた。こんな物に出会えるとは人生とはなんと不思議ものなのか…
「(この人誰かな・・・)」
エミリア「(そしてこの鏡は別世界から持ち込まれた異物らしい・・・一体どこから・・・)」
「・・・あの」
エミリア「(いやでも…そんなはずはない…長年放置されてたと言うのか…?)」
「あのっ!」
エミリア「わっわっ!?わぁーと!」
「うわっ」
エミリア「え、あ、え、え、なにっ!?」
思わず驚いた 声をかけた人も驚いた
危うく鏡を落としかけたがなんとか持ち直した、いやー危ない危ない…どうやら相当この鏡に気を取られてたようだ。呼ばれてたことにすら全然気が付かなかった…
「さっきっからこの鏡見つめてますけど、なにかあるんですか?」
エミリア「え、あー、これは・・・そのー…(どうやらここの店主のようね・・・)」
「申し遅れたね、僕はここの店主 ミスト・フューリア宜しく」
「うんよろしく。ねぇエミリアさん?なにもないならなんか買ってから帰ってください」
エミリア「(わぁ〜商売根性たくましい〜見習わなくては)そうね、あ、ならこの鏡をくれるかな?」
ミスト「ええ、いいですとも?」
エミリア「よかった、ねぇこれいくら?」
ミスト「えーと、年代物かつこんな豪華な装飾されてるんだから・・・このぐらい?」
算盤をパチパチと鳴らしながら素早く計算しエミリアに算盤の盤面を見せる
エミリア「な、な、な、なにこれぇー!?」
ミスト「当たり前です。あ、でも造られた日がいつなのかこの僕でさえ分からないですけどね…」
エミリアは目を疑い驚いた 店主は魔力が籠もった眼鏡をキラリと輝かせる。
本物だぁ・・・眼鏡を掛けているにも関わらずこの店主の銀色にも近い灰色の瞳は本物だ・・・なるほどね、いつの時代に造られたのかは解らないがこんな鏡にそんな値段を付けるのも分かる…
エミリア「へぇ・・・でもなんでこの世界に?」
ミスト「それは分からないですね・・・」
エミリア「そうなんだ・・・てか、その眼鏡で見てるのね」
ミスト「ええ、ちなみにこれ魔法導具ですよ。特注品ですけど」
エミリア「へ?魔法導具なの!?」
ミスト「はい、金の魔法導具シリーズの一つ"物の価値を知る為の黄金眼鏡"です」
エミリア「こんな眼鏡まであるのね…不思議だわ…」
ミスト「ちなみにその反対の魔法導具は"銀の魔法導具シリーズ"と言われています」
エミリア「ああーそれなら聞いたことある、聞くところによると世の中にとっての不便を解消し便利を一直線に追求そして苦労の末出来上がったのが…銀の魔法導具と呼ばれたのよね」
ミスト「そうですね、でもこの金の魔法導具はその銀の魔法導具以上の性能を誇っていて尚かつ数が少ないし物だったりこの眼鏡の様に誰かの特注品だったりします」
エミリア「なるほどね〜…通りで高いわけよ」
ミスト「まあ、僕的には買ってくれると嬉しいですね・・・それで買うんですか?」
エミリア「かいまー」
ミスト「そう言うのはいらない」
エミリア「買ったァ!」
ミスト「毎度あり〜」
こうして、骨董品屋から魔法導具を買って店から出た
お財布の中身はすっからかんになったけどまた頑張って稼ごうと思った・・・
鏡を袋にしまってとんがりボウシを被り直しオレンジ色の髪を揺らしながら箒に乗って空を翔ぶのだった・・・
しかし、これがちょっとした悲劇になるのは先のお話である・・・